ナチュラルサイエンスとクラシコムが手を組み制作したPodcast番組「親になっても、わたしは続く。」。子育て中の女性に寄り添うブランドコミュニケーションの一環として立ち上がったこのプロジェクトについて、株式会社ナチュラルサイエンス代表の小松令以子さん(写真中央右)と、企画部の高橋さん(写真右)に、お取り組みの背景から1年間の手応え、公開後の反響までお話を伺います。
聞き手は、株式会社クラシコム 執行役員 事業開発部部長の高山(写真左)とブランドインテグレーショングループ プロデューサー高松(写真中央左)です。
ズレと向き合って行き着いたPodcast
高山:1年ほど前に「BRAND NOTE」(タイアップ記事コンテンツ)のお取り組みとPodcastがスタートして以来、ご一緒させていただいております。最初はPodcastではなく、WEBサイト制作でご相談をいただいたんですよね。当時、どんな課題感を持たれていたのでしょうか?
高橋:今の公式サイトが通販サイトなので、「ママ&キッズがどんなブランドなのか」「ナチュラルサイエンスがどういう会社なのか」がわかりづらいという声がありました。スキンケアセミナーの開催や学会参加などの活動もしていますが、それらをお伝えする場所もなくて。30周年を目前に、弊社のさまざまな顔を知ってもらうサイトが必要ではないかというところからご相談させていただきました。
高松:御社は妊娠・出産・子育てに関する知見をたくさんお持ちで、お役立ち情報を載せるサイトとしても機能させたいというお話もされていましたよね。「そもそもなぜ情報を届けたいのか」と目的に遡ると、根っこには子育ての悩みを解決したいという思いがあると。一方で生活者は情報よりも、そのときどきの不安や悩みに寄り添ってほしい気持ちの方が強いんじゃないか。だとすると、両者をつなぐ方法として、サイトがベストなのだろうか? と掘り下げていくうちに、子育て中で手が離せない時間でも耳は空いていることが多いよねとPodcastに行き着いたんです。ちょうどPodcastが広がり始めていた頃で、「音声で寄り添う場所を一緒につくれたら」とご提案させていただきました。
高山:最初にお越しいただいたときから、小松さんのパワフルな魅力が印象的で。Podcastは誰を話者に立てるかが重要なので、小松さんという存在があったことも大きいですよね。
高橋:それはやらせてもらって、本当によくわかりました。
エッセイストの大平一枝さんと、編集者であり人気ポッドキャスト番組「働く女と◯◯と。」の小沢あやさんがお届けするポッドキャスト番組「親になっても、わたしは続く。」。2025年6月から配信中。現在は隔週金曜の朝更新。
高山:
ちょうど先日番組のリスナーさんへのオンラインN=1インタビューを実施しました。リスナーさんのリアルな声を聞いた感想をお聞きしてもよいでしょうか?
小松:家庭を持って子どもができて人生のステージが大きく変わっていく中で、やりたいこと、やらねばならぬこと、家族のことなど、リスナーの皆さんも多くの悩みを抱えて毎日頑張って暮らしているんだな、と。同時にそれを話せる相手が少ないことに改めて気付かされました。
「違う世代の人の話を聞く機会があまりない」とおっしゃっていたのが印象的で。実はPodcastをはじめた当初、今のママたちは、私のような少し上の世代の話をどう聞いてくれるのか少し不安だったんです。でも、世代が違うからこそ「経験を聞けることがいい」という言葉をいただきうれしかったですね。
それから「親になっても、わたしは続く。」というタイトルについても、「このタイトルに惹かれた」とおっしゃる方が本当に多いんです。私たちだけではこういう視点のものは作れなかったので感謝しております。
高橋:私は「暮らしと地続きでつながっているブランド」という言葉がすごく印象的でした。それはまさに私たちのものづくりで大切にしている目線です。Podcastというかたちだからこそ、しっかり伝えられたんだろうなとうれしくなりました。
高山:小松さんの出演も、みなさん信頼感を持って受け止めていましたよね。小松さんはスキンケア研究と会社経営とお子さんお孫さんがいる生活の三つが、それこそ地続きでつながっている方なので、出る意味があり、伝わるものがあるんだと思います。
小松:ありがたかったですね。企業のPodcastは「結局は製品PRか」と思われがちですが、そうではないと理解していただけていた。私自身が使用者でもあるので、「自分が使うためにはこうあるべきだ」というところからものをつくりたい。そこが伝わっていてよかったです。
高山:普段接しているナチュラルサイエンスのお客様と、Podcastのリスナーさんに共通点は感じましたか?
小松:ちゃんと自分らしく生きようとされている方が多いですよね。だからこそ悩んだり迷ったりするけれど、気軽に相談できる相手が今の時代なかなか見つからないのかもしれません。
高橋:番組を聞いて、心に残った言葉をメモして、立ち止まらずに前に進まれているリスナーさんの話も印象的でした。うちのスキンケアセミナーでも熱心にメモを取るお客様がたくさんいるので、すごく近い印象を受けました。
KPIでは測れない、「資産」としてのPodcast
高山:このPodcastの取り組みは2025年6月にスタートして、6,000人の方に登録いただいています。あえて明確なKPIを定めず、やりながら施策の効果や意味を考える1年だったと思います。始めた頃と今とで気づきなどはありますか?
小松:PodcastはKPIの設定がすごく難しいですよね。ですが今日リスナーの方の話を伺って、この取り組みの価値がどこにあるのか腑に落ちました。深くブランドを知った上で、使ってみようと思っていただけているんだなと。それは広告だけのコミュニケーションではなかなか難しいことです。
高山: ある種の資産がつくれているということですよね。広告だと費用として計上されるので、基本的にその年のP/L(損益計算書)で消えていくものですが、これはある意味、ナチュラルサイエンスさんのプロダクト開発に近い。
小松: そうですね。数字で追うものではないけれど、このじわじわ感と信頼の置かれ方こそ、今の時代に大切なんじゃないかと思っています。
高橋:私は普段、企画部で新規獲得など、広告でお客様に買っていただくことを担当してきたので、最初にご提案いただいたとき、「遠回りなのでは?」とも思ったんです(笑)。だからこそ、KPIの考え方などのすり合わせにも時間をかけていただきました。
でもインタビューで、ベビー用品を買っていた方が、小松の人柄や肌への真剣さに触れて自然と自分用のアイテムもで買ってくださっていると知り、理想的な結果になっているなと思いました。
小松:今、30周年を記念したファンミーティングを全国で開催しているんですが、創業当時からのファンの方々が挙げてくださる「弊社の好きなところ」と、リスナーの方々が「ここがいい」とおっしゃったポイントが同じだったんです。ものづくりの真剣さ、こだわり、暮らしとの地続き。ファンの方が好きでいてくださる部分をPodcastで多くの方に届けられているのは、一つの成果だと思います。
高山:リスナーさんへのインタビューでは、幼稚園の保護者会で番組をおすすめしたという声もありましたよね。商品だとなかなかおすすめしづらいけど、好きなコンテンツって「よかったら聞いてみて」とすすめやすいというのはありますよね。
小松:コンテンツを起点に商品を知ってもらうというのは、「北欧、暮らしの道具店」さんならではのやり方ですよね。高山さんから「Podcastがいいんじゃない」と言っていただいたとき、北欧さんならではのご提案をいただきうれしかったことを覚えています。
製品を直接訴求せずとも魅力を伝える。BRAND NOTEで感じた手応え
高山:Podcastのつながりから、ナビゲーターの大平一枝さんにナチュラルサイエンスさんが今年30周年のタイミングでBRAND NOTEの記事を2本執筆いただきました。この記事は大平さんの視点で、御社や小松さんについてご紹介いただくという記事なので、商品について深く紹介する内容ではありませんでした。それなのに、記事から御社サイトへの送客がこれまでの弊社実績値と比較しても高かった。
高橋:WEBのタイアップは、LPやサイトに送客させて、新規獲得数でで判断しがちな世界なので、最初は、「こんなに製品を訴求しなくて大丈夫なのか」と思っていて。つい「この商品も入れてください」と言いたくなるんですけど、「それはこういう理由でこうした方がいい」と、ちゃんと説明していただけたので納得することができました。
結果としても直近の取り組みの中でも御社の記事のクリック数が飛び抜けて高く、ちゃんと見ていただけている実感が得られました。御社の読者と弊社のお客様の親和性も感じられました。
「BRAND NOTE」として「大人の肌育ては一生もの」という連続企画を実施。大平一枝さんの特別エッセイとスタッフの愛用インタビューを掲載。
高松:記事を読んだ方からは、肌悩みがあるときでも使えそう、信頼できる会社がつくる製品なんだと気づけたというコメントが集まりました。すでに使用している方からは「良さを改めて再確認できた」という声が多かったのも印象的でしたよね。
高山:高橋さんはいろいろなメディアや媒体とお仕事をされていると思いますが、クラシコムのコンテンツの作り方にどんな特徴があると思われますか?
高橋:取材力に驚きました。芯がありますよね。弊社を深く知った上で、私たちの代わりに伝えてくれるので、安心して乗ることができます。
窓口の高松さんをはじめご一緒するライターさんや編集者さんが皆さん「クラシコムマインド」で取材にきてくださるので、コンテンツをすごく大事にされている感じがします。
高松:コミュニケーションはかなり密に取らせていただきましたが、それができたのは、工場見学なども含めてどんどん開示してくださるナチュラルサイエンスさんだからこそ。Podcastで定期的にご一緒し、会話量が多いのも大きいと思います。
高山:ナチュラルサイエンスさんには基本的に全てに根拠があるじゃないですか。「どうしてですか?」と聞いても必ずエビデンスがあるので、僕らとしては腑に落ちた上で紹介できる。すごくやりやすい。
クラシコムは感覚的な会社に思われがちなんですけど、実はさまざまなところにロジックがある会社なんです。論理がちゃんとないと気持ち悪くて出せない。ここは両社の似ているところですよね。
Podcastで届ける、「わたし」に寄り添う姿勢
小松:逆に私からも質問してもいいですか?お二人はこの取り組みに、どんな感覚を持っていらっしゃるんでしょうか?
高山:ナチュラルサイエンスとはどんな会社か、どんなことを大切にしているのかを届けていくうえで、それらをうまくまとめたコンテンツを1つつくっても難しいと思ってました。そういった「らしさ」のようなものは、継続性と一貫性のある取り組みのなかで滲み出てくるものですし、ある意味お客様を信頼してコミュニケーションを撮り続ける必要があります。その意義や効果を自分たちのポッドキャスト番組「チャポンと行こう!」「考えすぎフラグメンツ」でも感じていたので、まさしく同じような意義と効果を御社と生み出せていることが何より嬉しいです。
高松:これまでは「『北欧、暮らしの道具店』のお客様はこういう方々」とイメージしやすい相手に向けてつくっていたのが、今回はそこを飛び越えるので、どんなお客様に届くのか見えない不安がありました。でも蓋を開けてみたら、「北欧、暮らしの道具店」のお客様でもあり、ナチュラルサイエンスのお客様でもあるという共通点が見えたんです。そこからお手伝いできることの広がりも見えました。
実は、タイミング的にも「公私混同」の施策にもなっていて(笑)。小松さんから学ばせていただきながら、励まされて、役立つ情報を得て、暮らしが変わっていく。その実感が自分自身にあるからこそ、私みたいな人がもっと増えたらいいなと思っています。
高山:ナチュラルサイエンスさんとして、今後のこのPodcastをどう育てていくかといった展望はありますか?
小松:
6,000人という数字に手応えはありますが、もっとたくさんの方に聞いていただくにはどうしたらいいのかは常に考えています。
登録者1万人になったら「リスナーミーティング」がやりたいです。やっぱり対面に勝るものはありませんから。リアルでお会いすると「こういう方が聞いてくださっているんだ」とわかるし、生の意見も聞けるだろうなと。
高山:リスナーインタビューでも感じましたが、「私みたいな人がたくさんいる」「みんな一緒なんだ」ということは、リアルの場の方が感じやすいですよね。そうなると、必要になってくるのがリスナーの呼び名ですね。「チャポンと行こう!」の「チャポラー」のように名乗れる呼び名があると、「ナチュラルサイエンスの愛用者です」だけではない自己紹介がお客様の側に生まれるので、面白いですよ。
高橋:いいですね!弊社はベビーアイテムのイメージが強いのですが、それだけだと「子どもが大きくなったから離れてしまった」という声もあるんです。でも、弊社にはベビーからキッズ、ティーン、そして親自身も使えるアイテムがあります。「わたし」でつながっているこの番組を通して、うまく伝えていけたらと考えています。あとは「親になっても、わたしは続く。」がきっかけで弊社を知り、商品を使ってみたという方をもっと増やしていけたらいいですね。
高山:ライフステージが変わっても寄り添い続けてくれるメーカーはなかなかないような気がします。年代による卒業がないからこそ、資産として積み上がっていくPodcastとの相性がいいのでしょうね。
小松:そうですね。長く続けてくださっている方には、それこそ「三世代で使っています」という方もいらっしゃいます。リスナーさんも何年か経てば上のステージに上がっていきます。お子さんが中高生になったり、ご自身の更年期が気になり始めたり。ナビゲーターの小沢さんの成長とともにお悩みも変わっていくので、「わたし」の部分に寄り添う姿勢は変えずに長く続けられるといいなと思っています。
高山:そうですね!ぜひ、一緒に育てていきましょう。今日はありがとうございました。