ブランドの価値を「生活者の人生」に落とし込んで表現する。近道を狙うのではなく「じわじわと」。味の素AGFとクラシコムが挑む「ブランドらしさ」の伝え方

ブランドの価値を「生活者の人生」に落とし込んで表現する。近道を狙うのではなく「じわじわと」。味の素AGFとクラシコムが挑む「ブランドらしさ」の伝え方

味の素AGFとクラシコムが手を組み制作したドキュメンタリー動画シリーズ「こころの香りが立つ頃に」。「ちょっと贅沢な珈琲店®」のブランドコミュニケーションの一環として立ち上がったこのプロジェクトを牽引した味の素 AGF 株式会社のファンマーケティング推進部ブランドコミュニケーショングループ長の安藤映子さん(写真中央)に、 お取り組み の背景から制作プロセス、公開後の反響などお話を伺います。

聞き手は、クラシコム ブランドソリューショングループのプロデューサーで今回の取り組み全体の企画立案者である中村(写真左)とドキュメンタリー動画の企画・進行・ディレクションを担当した清水(写真右)です。

共通する価値観。「両社が良い関係を築けたら」からはじまった取り組み

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中村:今日はよろしくお願いいたします。今回のお取り組みでは、「ちょっと贅沢な珈琲店®」のブランド価値の訴求でドキュメンタリー動画シリーズ「こころの香りが立つ頃に」を3本制作しました。たしか初めてお話させていただいたのは1年以上前でしたよね。あらためて、今回、クラシコムと取り組みをしようと考えた背景や理由は何だったのでしょうか?

安藤:もともと私自身が「北欧、暮らしの道具店」のYouTubeをよく見ていたんです。日常の中で「あ、これも『北欧、暮らしの道具店』だ」という接点が多くありましたし、当社との過去の取組事例なども拝見していたので常に視界に入る存在でした。

クラシコムさんの「フィットする暮らし、つくろう」というミッションと、AGF®の「いつでも、ふぅ。」というコーポレートスローガンにどこか共通するものを感じていました。「日常の暮らしの中で、ちょっと自分を大切にする」という空気感や目指したい方向性に、高い親和性があると思ったんです。 ‎

今回は単発の商品プロモーションではなく、AGF®という会社や「ブレンディ®」、「ちょっと贅沢な珈琲店®」といったブランドのファンを育て、継続的な関係を築きたいと考えていました。その中で御社のことが自然と頭に浮かびました。

最初はたしか「『ブレンディ®』でも『ちょっと贅沢な珈琲店®』 でも構わないので、何かご一緒できないか」と、方向性を探るような、ふわっとしたお話をさせていただいた記憶があります。

中村:ふだんは商品が明確になっている状態でご相談をいただくことが多かったりするのですが、どのブランドにするかを含め一緒に考えてほしいというご相談だったので、すごくうれしかったですね。

安藤:とにかく、AGF®と「北欧、暮らしの道具店」が良い関係を築いていけたらいいなという思いがありましたね。

想像を超えた反響で確信したブランドの価値を届ける意義

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中村: それまでは具体的な商品訴求ではないブランドコミュニケーションは過去にあまりやられていなかったとお聞きしました。なぜこのタイミングでブランドコミュニケーションを始めようと思ったのでしょうか?

安藤: 「ちょっと贅沢な珈琲店®」は、豊かな香りとコク、そして澄んだ後味が特長の レギュラーコーヒーを中心に、2007 年の発売以来、着実にファンを増やしてきたブラ ンドです。一方で、当社の主力ブランドである「ブレンディ®」に比べてまだ認知が低位という課題も抱えていました。その認知拡大を目的に、日頃の忙しさや緊張で“こころの余白 “を失くしがちな現代に、一杯の珈琲の価値を伝えるブランドコミュニケーションを実施することになりました。ただ、 マスコミュニケーションによる発信だけでは、抽象的な「イメージ」だけで終わってしまう懸念もあります。味わいの魅力はもちろん、ブランドが持つ「情緒的な価値」を深く伝えるには、その世界観を丁寧に構築し、生活の中でどう取り入れるかを具体的に表現する必要があると考えたんです。

中村: そういうなかで、当店を思い出していただけたのはすごくうれしいです。お取り組みをするときに、弊社にどんなことを期待していただいていたのでしょうか?

安藤: クラシコムさんは常に人の暮らしに正面から向き合っている会社だという印象がありました。だからこそ、メッセージをしっかり生活者目線で丁寧に翻訳し、伝えてくれるのではないかという期待がありました。また、制作のクオリティや編集の品質についても信頼していたので、間違いないものを作ってくれるという思いがありましたね。

AGF®のファン増加・LTV拡大を見据え、「ちょっと贅沢な珈琲店®」における生活価値への共感と好意を向上させる目的で制作されたドキュメンタリー動画シリーズ「こころの香りが立つ頃に」。2025年11月から2026年1月にかけて3本公開。

清水:私は動画の制作の過程で、安藤さんといろいろなコミュニケーションを取らせていただきました。今回、人生の後半を自分らしく生きることを望んでいる方に向けた「こころの香りが立つ頃に」という3本のドキュメンタリー動画を作成しましたが、実際に動画を制作してみての感想はいかがでしたか? 

安藤:本当に充実したプロセスで、とても楽しかったですね。12分ほどの動画を制作しましたが、初期にプロデューサーの中村さんに「ブランドはエピソードの積み重ねでできる」と言われたことがとても印象に残っています。それを聞いて、「一杯の珈琲の価値」の先にある、「自分のこころに耳を傾け、自分を大切にする時間を持ってもらいたい」というブランドメッセージを感じてもらうには、長尺で一人の方の人生を振り返りながら伝えることが必要だと思ったんです。 ‎

事前インタビューも参加させていただいて、3人の出演者の方々の、自分の軸を持ちながらも肩肘張らない自然な佇まいに触れ、「この方々に語ってもらえればきっと響く」と手応えを感じました。

シリーズ3作目の德田民子さん編は、高評価数:6208、コメント:49件と広告動画にも関わらず「北欧、暮らしの道具店」の人気通常動画と肩を並べる、非常に大きな反響のあるコンテンツとなった(2026年4月時点)

清水: 安藤さんには制作メンバーのようにかかわっていただけたので、我々としてもすごく心強かったです。 動画の反響や手応えはいかがでしたか?


安藤: 反響は想像を大きく上回るものでした。 再生数はもちろん、高評価数やコメントの内容にも注目していて、自分の中で高評価が1,000件を超えたらいいなという目標があったのですが、その水準を軽く超えていき、期待以上の反応に正直驚かされました。

「自分の心の声に耳を傾けたいと思った」「年を取ることに希望を持てる気がした」といったコメントもいただきました。思い描いていた理想の反応でもあったので、そういうコメントがあったのはとてもうれしかったです。

レビューのための事後調査も一緒に実施しましたが、目標としていた指標の伸長も確認でき、マス‎ コミュニケーションとの役割の違いもよく理解することができました。

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清水: クラシコムのメンバーからも好評で、店長の佐藤もタイアップの動画と知らずに見て、「すごくいいね!」と言っていました。

安藤: コンテンツ制作のプロである御社内で好評だというのは、どんな数字よりも社内の自信に繋がります(笑)。

清水: 制作中は本当に膝を突き合わせて議論しましたよね。私がとくに印象に残っているのは、「なぜコーヒーの動画なのに、冒頭のカットにおにぎりなんですか?」と安藤さんからツッコミをいただいた時のことです(笑)。

安藤: ありましたね(笑)。コーヒーを提供する立場からすると 「コーヒーとの相性を考えるならばパンだろう」 と思ってしまうのですが、生活者のリアルな暮らしの視点では和食でも全然ありだなと。私がつい「商品をもっと目立たせたい」と出過ぎてしまいそうな場面でも、清水さんは「ドキュメンタリーとしてのリアルさ」を重視して、スッと線を引いてリードしてくださった。その制作ポリシーの強さがとても心地よかったですし、プロフェッショナルな頼もしさがありました。

価値観を共にする両社だからできる持続可能なブランドコミュニケーション

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中村:先ほどの「情緒的な価値を伝える」というお話にも繋がると思うのですが、御社は直接的に商品を訴求するプロモーションもやられているなかで、今回安藤さんは意思を持って、中長期を見据えたブランドコミュニケーションに踏み切ったと思うのですが、改めてその背景を教えてください。

安藤:日々選んでいただくためには、「手軽さ」や「美味しさ」といった直接的な価値をきちんと伝えていくことも欠かせません。一方で、コーヒーは嗜好品であるがゆえに生活や社会環境が変化した際には真っ先に選択肢から外されてしまう可能性のある存在でもあります。だからこそ、選ばれ続けるためには感情的なつながりが重要だと考えていて、その文脈では、中長期的なコミュニケーションが不可欠になります。合理性とか理屈だけで考えると踏み出しづらい部分ではありますが、短期施策と中期施策の取り組みの両立は以前から意識してきたテーマです。

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中村:今後、クラシコムと一緒にチャレンジしていきたいことはありますか? ‎私たちとしては「ちょっと贅沢な珈琲店®」をコーヒーという「プロダクト」ではなく、心の声に耳を傾ける時間をもたらす「サービス」として捉えるといろいろなかたちでお取り組みできるのではないかと感じています。

安藤:両社のファンの方々が交流できるような場も作れたら面白いですし、「こころの香りが立つ頃に」シリーズ もぜ ひ継続した取り組みにできたらと考えています。共感してくださる仲間をじわじわ増やしながら、長く続けていける形が理想ですね。

あとはクラシコムさんにとっても初めてとなるような新しい領域への挑戦にも踏み込んでみたいです。既存の成功パターンに安住するのではなく、あえて更新にいくような取り組みです。

提供するものやアプローチは違えど、「人々の暮らしを、今よりちょっと豊かにしたい」「自分らしくいられる社会を支えたい」という想いは両社に共通していると感じています。近道を狙うのではなく、着実に、じわじわと時間をかけてつながりを深めていくこと。その中で、お互いの強みを持ち寄り、取り組みの形を少しずつ拡張させていけたらうれしいです。

中村:ありがとうございます、とてもうれしいです。おっしゃる通り、「人々の暮らしを今よりちょっと豊かにしたい」という根底の想いが共通しているからこそ、枠組みに囚われずゼロベースでご一緒できると感じています。私たちも決まったメニューを提供するというより、ブランドの課題に対して「今までにないアプローチ」を一緒に企てていくのが本来のスタンスです。

これからも、近道ではなく「じわじわと繋がっていく関係」をご一緒できたらうれしいです。本日は本当にありがとうございました!

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▼ドキュメンタリーシリーズ「こころの香りが立つ頃に」全3本

 

 

書き手:花沢 亜衣 | 写真:井手 勇貴

 

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